ショートトラックのブレードの種類 その2 ”FG”と”PM”について
公開日:
:
最終更新日:2013/10/16
スピードスケート ブレード
スピードスケート専門店スピードスターの中山です。こんにちは。
前回の記事はいかがだったでしょうか。
このようなブログを書く事は初めてですので、変な表現等になっていたら、大変申し訳ございません。
前回はショートトラックのブレード”GOLD”と”DURO”の違いについてご説明いたしました。
「知らなかった」とか「為になりました」のような反響がかなりありました。
また、「周りが使っているから使っていたが勉強になった」のようなお声もいただきました。
となると、本日お伝えする “FG”と”PM”については、かなりの方が知らないのではないでしょうか。
“FG”と”PM”の違いについて
基本的にはトップ選手が使用しているブレードを真似ることでまず間違いはないと思うのですが、ご自身及びチームの選手がどのような道具を使用しているのかについて知っておくことは必ずプラスになると思います。
本日は、それぞれのブレードにラインナップされている”FG”及び”PM”についてご説明したいと思います。
MAPLE社のブレードのGOLDとDUROには、それぞれに”FG”と”PM”があります。
【MAPLE GOLD】 3種類
・GOLD
・GOLD FG
・GOLD FG PM
(GOLD PMはありません)
【MAPLE DURO】 4種類
・DURO
・DURO PM
・DURO FG
・DURO FG PM
これらのブレードの違いについては、当ショップを訪問してくださったお客様はほとんどご存知ありませんでした。
だいたいは
「DURO 下さい」
「DUROは2本でいくらですか?」
のようにご連絡いただきます。
当方から「DUROのFGですか?PMですか?」とお聞きすると、
「なんですかそれは??????????」
というほぼ100%返答が返ってきます。
当方のショップでの商品記載があまりにも下手と猛省しています。
写真からは区別が難しいですし、商品名もごちゃごちゃしてますからね、、、
本日こちらでそれぞれの商品の違いについて解説したいと思います。
FGとはFuture Generationの略
FG : Future Generation (フューチャージェネレーション)の頭文字をとって”FG”です。
これは直訳すると、「次世代」という意味になります。
商品の特性とは無関係で、ただ単にかっこいい名前をつけただけだと思われます。
MAPLE社からは、「曲げ」についての性能が通常品よりFGのほうが向上しているとのことです。
(曲げが安定するという意味なのでしょうか)
これによるメリットについて、MAPLE社は
- (氷への)圧力の分散レベルの向上
- 操作性の向上
と言っています。
(このメリットから、「曲げ」が安定すると推測しました)
PMとはPowder Metalの略
PM : Powder Metal(パウダーメタル)の頭文字をとって”PM”です。
これはブレードの素材そのものが異なるので、大きな違いになります。
ショートトラックのブレードはバイメタルブレードを採用しています。
バイメタル : Bi-meta
バイ(Bi)というのは二つのという意味で、その名の通り、2つの金属素材からできています。
- チューブに近い方が靭性(じんせい)に優れている金属
- 氷に接する部分が耐摩耗性(たいまもうせい)に優れている金属
これら二つの金属を合わせることで、氷との摩耗にも強く、チューブに掛かる圧力にも強いブレードができています。
2つの素材を貼り付けることで硬さと粘りの両方の特性を持つことを可能にしたブレードです。
今回のパウダーメタル(PM)は氷に接する耐摩耗性部分が変更になりました
何が異なるかというと、素材の整形段階の加工方法に違いがあり、パウダーメタルについては、融点ギリギリの温度制御を行い、非常に細かで均一な粒子の集合体の為、単一素材でありながら、粘り強い金属にすることが可能です。
では、なんで粒子を均一にする必要があるかというと、スケートのブレードも、一般で仕様する包丁等の刃関連の道具というのは、道具の形に整形後、「焼入れ」という加工を行います。
焼入れとは、道具の使用部分の温度を超高温まで上げて、その後急激に冷やすことにより鋼の組成形状を変化させ、硬さを上げる方法
簡単に言うと焼きれをすることにより、ブレードの氷との接する部分の硬さが増し、摩耗に対して更に強くて切れ味がでるブレードができます。
普通のブレードとPMのブレードは何が違うの?
話を戻して、普通のブレードとPMのブレードの違いについて説明すると、普通のブレードは、大小様々なサイズの粒子の塊になってしまい、焼入れの際の、「焼きれ具合」が粒子のサイズによって、バラつくという問題が発生します。
まあ、例えるなら、厚みがばらばらのお肉を鉄板で焼くことをイメージしてください。
ある箇所(薄い箇所)は中身までしっかり焼けていて、
ある箇所(分厚い箇所)は半ナマ状態という言い方だとイメージつき易いでしょうか?
つまり、ブレードの先端は硬い、ブレードの真ん中は柔らかい、ブレードの後ろは硬いといったようなブレードが存在し得るということです。
ということは、せっかくの選手の能力を安定して氷に伝えることができないということですね。
一方で、パウダーメタル(PM)を採用すると、粒子のサイズが均等になっているので、この焼入れ加工をした際に綺麗に均等に焼入れが入るので、硬さにばらつきがでません。
先ほどのお肉の例えだと、
厚みが均一なお肉を鉄板の上で焼くことをイメージしてください。
どの箇所も均等に焼けますよね。
今年になってMAPLE社がこのパウダーメタルを使用したブレードを販売しました。
結論から申し上げると、高記録を狙うのであれば、良質のPM鋼なのであれば(ここに当方は責任を持てません)、選手の身体能力、スケーティング能力を安定して氷に伝えることができるため、PMを利用すべきです。
もしご意見やご指摘がございましたら、是非ご連絡いただければと思います。
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